喘息(ぜんそく)とは
喘息〔気管支喘息(きかんしぜんそく)〕は、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起こり、気道が収縮して狭くなる病気です。
息が苦しくなり咳や痰がでるなどの症状が繰り返しみられます。
喘息患者さんの気道は慢性的な炎症によりとても敏感になっているため、ちょっとした刺激が加わっただけでも喘息症状が急激に悪化して、激しい咳や呼吸困難などが起こる「喘息増悪(ぜんそくぞうあく)」がみられることもあります。
喘息(ぜんそく)の治療目標
喘息の治療目標は、増悪や症状がなく、薬剤の副作用がなく、呼吸機能を正常なレベルに維持することです。症状のコントロールでは、気道炎症の原因となる危険因子を回避・除去して、適切な薬物治療により気道炎症の抑制と十分な気管支拡張(可能な限り良好な呼吸機能)を達成し、患者さんが健常人と変わらない日常生活を送れることを目標とします。
喘息の管理目標
Ⅰ. 症状のコントロール (増悪や喘息症状がない状態を保つ) |
①気道炎症を制御する* ②呼吸機能を良好に保つ (PEFが予測値の80%以上かつ日内変動が10%未満) |
---|---|
Ⅱ. 将来のリスク回避 |
①喘息死を回避する ②急性増悪を予防する ③呼吸機能の経年低下を抑制する ④治療薬の副作用発現を回避する ⑤健康寿命を良好に保つ |
*:可能な限り呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)測定や喀痰好酸球検査で気道炎症を評価する
『喘息予防・管理ガイドライン2024』作成委員会 作成:喘息予防・管理ガイドライン2024, P.2, 3
薬物治療
喘息治療は薬剤の貢献が大であり、喘息コントロールの中心的な役割を担っています。
抗喘息薬には、毎日継続的に使う薬「長期管理薬」と、喘息増悪が起きたときだけに使う「増悪治療薬」の2つの種類があります。
- 長期管理薬
- 長期管理のために継続的に使用しコントロール良好を目指す薬剤です。
- 増悪治療薬
-
喘息増悪治療のために短期的に使用する薬剤です。
『喘息予防・管理ガイドライン2024』作成委員会 作成:喘息予防・管理ガイドライン2024, P.106
喘息治療ステップ−薬物療法−
長期 管理薬 |
基本 治療 |
ICS(低用量) | ICS(低~中用量) | ICS(中~高用量) | ICS(高用量) |
上記が使用できない場合、以下のいずれかを用いる
|
上記で不十分な場合に以下のいずれか1剤を併用
|
上記に下記のいずれか1剤、あるいは複数を併用
|
上記に下記の複数を併用
|
||
追加 治療*1 |
アレルゲン免疫療法*2 | ||||
増悪治療*5 | SABA | SABA*6 | SABA*6 | SABA |
ICS:吸入ステロイド薬、LABA:長時間作用性β2刺激薬、LAMA:長時間作用性抗コリン薬、LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬、SABA:短時間作用性吸入β2刺激薬、抗IL-5Rα鎖抗体:抗IL-5受容体α鎖抗体、抗IL-4Rα鎖抗体:抗IL-4受容体α鎖抗体
*1:喘息に保険適用を有するLTRA以外の抗アレルギー薬を用いることができる
*2:ダニアレルギー、特にアレルギー性鼻炎合併例で安定期%FEV1≧70%の場合はアレルゲン免疫療法を考慮する
*3:通年性吸入アレルゲンに対して陽性かつ血清総IgE値が30〜1,500IU/mLの場合に適用となる
*4:経口ステロイド薬は短期間の間欠的投与を原則とする。短期間の間欠投与でもコントロールが得られない場合は必要最小量を維持量として生物学的製剤の使用を考慮する
*5:軽度増悪までの対応を示し、それ以上の増悪については「急性増悪(発作)への対応(成人)」の項を参照
*6:ブデソニド/ホルモテロール配合剤で長期管理を行っている場合は同剤を増悪治療にも用いることができる
*7:ICS/LABA/LAMAの配合剤(トリプル製剤)
*8:LABA、LTRAなどをICSに加えてもコントロール不良の場合に用いる
*9:中用量ICSとの併用は医師によりICSの高用量への増量が副作用などにより困難と判断された場合に限る
『喘息予防・管理ガイドライン2024』作成委員会 作成:喘息予防・管理ガイドライン2024, P.124
重症喘息(じゅうしょうぜんそく)の治療
高用量の吸入ステロイド薬を使ったり、複数の治療薬を併用したりしても、喘息症状がコントロールできないことがあります。
このようなコントロール不良な喘息を重症喘息と呼びます。
重症喘息にはいくつかのタイプのあることがわかっていますが、気道の炎症を引き起こす好酸球(こうさんきゅう)の著しい増加が認められる喘息を「好酸球性の重症喘息」と呼びます。
「好酸球性の重症喘息」に対しては、好酸球が増加するのを抑えて、気道の炎症を鎮める作用のある治療薬(ヌーカラ)を、基本の治療薬(吸入ステロイド薬や気管支拡張薬など)と併用して使います。